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山陰スピリチュアル紀行

荒神谷の史跡巡りと講演会

荒神谷史跡公園~荒神谷遺跡~荒神谷博物館

今回はゲストに荒神谷博物館の副館長で学芸理事の平野芳英先生を訪ね、「古代出雲と荒神谷遺跡」という題で講演をしていただきました。

 

島根県出雲市斐川町にある荒神谷史跡では1984年8月、全国の弥生時代銅剣の全ての発見量を上回る358本の銅剣が発見されました。そして翌年には銅鐸・銅矛が出土し、古代出雲の歴史を紐解く場所として注目されることになりました。今は史跡の保存だけでなくて市民や観光客の憩いの場所となっていて、6月~7月は約5万本の古代ハスが見事です。

 

ところがこの古代ハス、現在危機にあるそうです。今回訪ねた時も思ったのですが、数年前より花の数が少ない気がしていました。ちょっとまばらな感じ。なんと現在ハス池にアメリカザリガニが多数繁殖しているらしく、ザリガニたちが地中に掘った穴から水が抜けてしまうのだそうです。知らないうちに水が少なくなっているので花の付きも悪くなるのだそう。

 

アメリカザリガニに罪はないのですが、誰かが逃した外来種の被害がここにもありました。博物館の対応も素晴らしく、子どもたちのザリガニ釣り(釣ったザリガニは博物館が回収)を実施していて、この日も大勢の家族連れが楽しんでいました。

さあ、このハス池の奥に進むと大量の銅剣が発見された場所があります。地形で見ると谷の奥の奥の1番奥です。平野先生によるとこの谷の奥というのがポイントだそうで、谷というのは古代の「まち」。山から水が流れてきて、その水が生活用水になり、田んぼにひかれ、集落ができる。その集落でも聖域として守られていたのが「谷奥」ではないかということでした。

 

発見された358本の銅剣は武器として使用されたのではなく、祭器として使われたと考えられているので、まさに大事なものを大事な場所に埋めたというのとですね。銅剣が発掘された場所はそのままの形で残されています。もちろん銅剣は古代出雲歴史博物館(出雲市大社町杵築東)に展示保管されていますが、埋められていた場所はこのような山の斜面でした。

 

358本が4列に分けられ、きれいに整列して並べられていた形。明らかに丁寧に扱われていて、偶然埋まった形ではないですね。実は、当時の人達が「なぜ埋めたのか」明確なことはわかっていません。ただ、平野先生がとても面白い調査結果を教えてくれました。

この謎の銅剣、358本のうち実に344本に「×」印が刻まれていました。その印がある例は荒神谷遺跡と隣在する加茂岩倉遺跡(雲南市加茂町岩倉)から出土したものだけです。×」印の意味はいまだに謎ですが、「神霊をここに結び鎮める」と埋納した剣のもつ威力が逃げないようにする為の手段などとも考えられています。

 

なぜ358本なのか、なぜ×マークがあるのか、なぜ埋めたのか、まだまだ謎が多く、「是非、社ガールの皆さんで引き続き荒神谷の謎を研究してほしい」と平野先生がおしゃっていました。

きれいに並べられていた銅剣を取り出すと、その下の土にが空いていました。わざわざ穴の上に銅剣を置いたとは思えないのでこの穴には何かが埋まっていたと考えられます。そして、年月が経って、埋められていたものがきれいに無くなったのではないか。考えられるのは、「食物」ではないかと。と、なればやはり祈りなどの儀式の光景が浮かびますね。

つづいて午後からは荒神谷博物館の中で「古代出雲と荒神谷遺跡」の講演を聞きました。

 

とても興味深かったのは「谷」「クラ」関わりについて。『古事記』の上巻には神名の中に「クラ」と冠せられた神名がみられます。アメノクラドノカミ、クラオカミノカミ、クラミツハノカミ、クラヤマツミノカミ等。いずれも共通するのは渓谷をつかさどる神です。また、そのうちの3神はイザナミの女陰を焼いて生まれた迦具土(カグツチ)神から生まれたもの。これらの共通点から、いずれも渓谷や手の股、足の股などV字型を連想させます。また谷は、山と山が迫りあったくぼみでVの象徴で「クラ」は谷の古語とも考えられています。山が迫りあうと暗いですもんね。

 

以上のことからやはり荒神谷は「神に守られた集落」を築くにはとてもベストな場所だったのでしょうね。

平野先生は石座(イワクラ)の調査や研究にも精力的に取り組んでおられ、今後の研究成果にも注目です。著書「古代出雲を歩く」(岩波新書)も是非お読みください。

所在地:島根県出雲市斐川町神庭873-8

(2022.05.23)

協力:河野 美知 (社☆ガール)

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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